J-hemo
血友病とともに生きる人のための委員会
HOME お問合わせ 世界血友病連盟(WFH)のオフィシャルページへ
JCPHとは
ご挨拶
入会のご案内
活動内容
シンポジウム
各種要望
議事録
患者憲章
血友病ってなあに?
かんたんな説明
詳しい説明
血友病Q&A
新着情報
リンク集
血友病ってなあに?
  詳しい説明
1.病気について
(1) 血友病とは
(2) 血友病の病態
a.血友病と四肢障害
b.インヒビター(抑制物質)
(3) 遺伝病としての血友病
(4) 血友病治療の考え方
a.基本的な考え方
b.治療製剤の投与量計算
c.治療製剤の種類
 
2.血友病治療の歴史
(1) クリオ以前(−1970年まで)
(2) クリオ製剤から非加熱高濃縮製剤(1970−1985年)
(3) 血友病治療製剤の技術革新(1985年以降−)
 
3.血友病治療の課題と将来
(1) C型肝炎について
(2) 血友病治療製剤の安全性と安定供給
(3) 血友病治療の将来
1.病気について
(1) 血友病とは
 血友病とは、血液凝固に関与する12種類のタンパク質(血液凝固因子)の一部が不足しているため、出血すると血液が凝固しにくい病気である。血液凝固因子のうち、第VIII因子が不足(因子活性が欠損)しているのが血友病A、第IX因子が不足しているのが血友病Bである。血友病の有病率は、2000年度血液凝固異常症全国調査によれば、日本人男子10万人に7.2人の割合であった。血友病Aと血友病Bの患者比率は約5対1(3798 : 824)となっている1)。血友病では重症度を凝固因子量により分類し、第VIII因子(または第IX因子)が1%未満を重症、1〜5%を中等症、5%以上を軽症と定義している。軽症血友病患者については、出血症状があまり見られず、成人するまで気付かないことも稀ではない。
△Page TOP
(2) 血友病の病態
a. 血友病と四肢障害
 血友病における出血部位は、深部出血が多く、関節内出血、筋肉内出血、頭蓋内出血や腎出血などが特徴的である。年齢によって、それぞれ出血を起こしやすい部位が異なり、例えば1歳に満たないころは皮下出血(青あざ)が多く、成長に伴い運動量が増してくると関節内出血や筋肉内出血を起こしやすくなってくる2)。また頭蓋内出血や腹腔内・内臓(消化管)への大量出血は、対応を誤ると致命的であるが、日常的に頻度の高い関節内や筋肉内出血は、血液凝固因子製剤が普及した今日では、製剤を輸注し凝固因子を補充する(補充療法)のが治療法である。かつての輸血療法やクリオ製剤に比べれば、処置も簡単であり大事に至ることはない。
 ここでは比較的頻繁に起こり得る関節内出血・筋肉内出血について述べることにする。
 仮に今、血友病患者が関節内出血を起こした場合、このまま放置するとどうなるか。健常人であれば、血管外へ出た血液は血小板の凝集(1次止血)や血液凝固因子の作用によって迅速に止血・凝固がなされ(2次止血)、傷口は治癒されるが、血友病患者の場合、血小板が凝集して傷口をふさぐことはできる(1次止血)が、血液凝固因子が少ない(フィブリンを産生できない)ために2次止血することができず、傷口の治癒が十分に行われない。したがって、血管からあふれ出た血液は、やがて関節腔内を充満し、行き場のなくなった血液が組織や神経を圧迫して激痛を与えることになる。
 筋肉内への出血も止血することができないため、筋肉繊維組織の隙間に血液がしみ込み、ちょうどスポンジが水を吸い込むようなもので、限られた空間である関節腔に出血する関節内出血に比べて出血量が多くなる。やがてパンパンに腫れ上がった筋肉は激痛を伴うことになる。
 理論的には、健常人と比べて少ない凝固因子を補充すれば、関節内出血も筋肉内出血も正常な凝固作用機序によって止血することができる。しかしながら凝固因子製剤の投与が遅れて出血量が増えてしまうと治癒が遅れるばかりでなく、関節内や筋肉内に出血した血液を分解・吸収する過程で後遺症を引き起こすことになる。
 関節腔内に出血した血液は異物であるため、体は異物である血液を一生懸命排除させようとして、いろいろな酵素によって出血した血液を分解し吸収しようとする。それらが一連の炎症反応を起こし(関節炎)、分泌される蛋白分解酵素によって自身の軟骨や関節を形成する骨を侵食していくことになる。このような一連の『出血−炎症−破壊』という悪循環を繰り返す(慢性化する)ことによって、関節を動かすと痛むといった状態(後遺症)になってしまう。この状態を血友病性関節症という。
 肘・膝・足首の関節に障害がある血友病患者が多いのは、このような後遺症によって関節が変形した結果なのである。筋肉内出血については、関節内出血とは異なり、溜った血液を抜くのは困難であるため、自然に吸収するのを待たなければならない。対応が遅れたり、凝固因子製剤を補充せずに放置したり、筋肉内出血を悪化させてしまうと、筋肉が縮んで伸びなくなるといった後遺症となる。これをきんにくこうしゅく筋肉拘縮といい、主に足のふくらはぎ部分や腰付近の筋肉(ちょうようきん腸腰筋)にこうしゅく拘縮が見られる血友病患者が多く、ひどい場合は歩行困難な障害に至る。
 したがって血友病は単に血が止まりにくい病気ではなく、繰り返す出血の後遺症により四肢障害を残すことがある疾患といえる。
 以上の理由から、血友病患者は出血の後遺症により手足に障害を持っており、障害の程度に応じて身体障害者の認定を受けている血友病患者も多数いる。
 
b. インヒビター(抑制物質)
 血友病におけるインヒビターとは、生体の抗原抗体反応により投与された血液凝固因子に対して産生された抗体(抑制物質)のことをいう。この抗体ができてしまうと、投与された第VIII因子や第IX因子を体が異物として判断し排除してしまうため、補充療法が効かなくなってしまうことがある。この第VIII因子や第IX因子のインヒビターを産生してしまう血友病患者のことを、単にインヒビター保有患者またはインヒビターと呼ぶ。
 日本の血友病患者におけるインヒビター保有率は、血友病Aで7.1%(133例)、血友病Bで6.4%(25例)となっている。最近では検査法が鋭敏になったこともあり、少量のインヒビターが検出される患者が増えたともいわれている。このインヒビター力価の高い血友病患者においては、第VIII因子・第IX因子製剤が無効であるため、第VII因子製剤などのバイパス治療製剤が使用される。この血液凝固第VII因子は、血液凝固過程の最後の部分に作用する。したがって凝固過程全体から見れば、第VIII因子・第IX因子の作用を迂回(バイパス)したようなことになるため、第VII因子製剤などによる治療をバイパス療法という。
 体内のインヒビター(抗体)は、第VIII因子・第IX因子が補充されなければ徐々に減少していく。つまりインヒビターが減少した状態であれば、初回投与の凝固因子製剤は効果がある。したがって著しくインヒビターを産生してしまう(高力価のインヒビターを保有する)血友病患者は、大きな出血に備えインヒビター力価を減少させておくことも必要であると考えられる。
△Page TOP
(3) 遺伝病としての血友病
 血友病は、伴性劣性遺伝形式をとる病気であり、性染色体の・染色体異常の男性が血友病患者として生まれる(図1)。女性の場合は性染色体として・染色体を二つ持っているため、たとえどちらか一方の・染色体が異常であっても、もう一方の染色体が正常であれば、見かけ上血友病の出血素因は現れにくい。しかしながら、その女性は子孫に・染色体異常を遺伝させる可能性がある。その女性は保因者と呼ばれ、血友病患者を出生する可能性がある。中にはその発生に関して遺伝関係の不明な突然変異と考えられるものもある。
 
図1 血友病患者が生まれる場合
図1 血友病患者が生まれる場合
△Page TOP
(4) 血友病治療の考え方
a. 基本的な考え方
 血友病患者は、健常者に比べて出血時の止血に必要な血液凝固因子の一部が欠乏しているため、治療法は少ないものを補充する(補充療法)という考え方に立つ。つまり血友病Aの患者には第VIII因子製剤を補充し、血友病Bの患者には第IX因子製剤を補充する方法が行われる。
 この補充療法における投与方法には、初回投与、連続投与、定期投与、予防投与、持続投与といった方法があるが、ここでは補充療法の基本的な考え方について説明する。
b. 治療製剤の投与量計算
 
製剤の投与量は、患者の体重及び出血部位や程度に応じて決められるが、実際に第VIII因子や第IX因子を患者の体内に投与した場合、どの程度輸注効果があるか(生体内回収率=輸注直後の凝固因子活性値/上昇期待値×100%)を知っておく必要がある。
 血友病Aの場合については、健常人の血漿中の第VIII因子活性を100%とすると、体重1kg当たり第VIII因子製剤1単位(正常新鮮血漿1ml中に含まれる第VIII因子量)を輸注することによって、患者の血漿中第VIII因子は約2%上昇する。血友病Bについては、第IX因子製剤の生体内での回収率が第VIII因子に比べて低いので、体重1kg当たり第IX因子製剤1単位投与すると、血漿中の第IX因子は約1%上昇する。これを考慮した上で、次のような計算式に基づいて製剤の補充量を決定する。

 血友病Aの場合:必要な輸注量(単位)=上昇期待値(%)×体重(kg)×1/2
 血友病Bの場合:必要な輸注量(単位)=上昇期待値(%)×体重(kg)×1

 
体重50kgの血友病A患者の関節内出血に対して、第VIII因子活性を20%上げようと思えば、第VIII凝固因子製剤を500単位投与することになる。
 なお補充された血液凝固因子は、投与後約30分〜1時間で最高活性値を示した後、徐々に減少していき、第VIII因子なら約15時間、第IX因子なら20時間で半減する。実際の補充療法ではそれらを考慮した上、出血の部位や程度に応じて補充計画をたてることになる。
 血友病AあるいはB、出血の部位や程度に応じて補充する量と期間が変わってくる。そのため投与量については十分に主治医と相談する必要がある。
 例えば、体重が60kgの血友病Aの患者で、関節内出血で第VIII因子レベルを20%まで上昇させたいと考えた場合、もしも500単位の製剤を使えば、因子活性は約16.7%上昇するが、やや目標血中第VIII因子レベル20%に足りない。1000単位の製剤を使った場合は、約30数%まで上昇する(図2.、図3)。
 
図2 目標因子レベルと投与量・体重(血友病Aの場合)
図2 目標因子レベルと投与量・体重(血友病Aの場合)
 
図3 上昇期待値の計算(血友病Aの場合)
図3 上昇期待値の計算(血友病Aの場合)
 
図4 目標因子レベルと投与量・体重(血友病Bの場合)
図4 目標因子レベルと投与量・体重(血友病Bの場合)
  同様に、血友病Bの場合は、図4のように投与量を計算する。
c. 治療製剤の種類
 現在、血友病治療および類縁疾患の治療に使用されている主な血液凝固因子製剤および遺伝子組み換え製剤の一覧を表1に示す。
  表1 主な血液凝固因子製剤および遺伝子組み換え製剤の一覧
 
種 類
原 料
成 分
製剤名
メーカー
血友病A
治療製剤
ヒト血漿 第VIII因子製剤 クロスエイトM 日本赤十字社
第VIII因子・
フォンヴィランド因子製剤
コンファクトF 化学及び血清療法研究所
遺伝子組換え 第VIII因子製剤 コージネイトFS
リコネイト
バイエル薬品
バクスター
血友病B
治療製剤
ヒト血漿 第IX因子製剤
第IX因子複合体製剤
ノバクトM 化学及び血清療法研究所
プロプレックス バクスター
インヒビター治療薬 ヒト血漿 第IX因子複合体製剤
活性化血液凝固因子抗体迂回複合体製剤
プロプレックスST
ファイバ「イムノ」
バクスター
遺伝子組換え 活性型第VII因子製剤 ノボセブン ノボノルディスクファーマ
*第IX因子複合体製剤には、主に第II・第VII・第IX・第X因子が含まれている。
  △Page TOP
 
2.血友病治療の歴史
日本における血友病治療の大まかな流れを以下に示す。
 
1970年 血友病A治療薬としてクリオ製剤発売
1972年 血友病B治療薬として第IX因子複合体製剤発売
1978年12月 非加熱高濃縮血液凝固因子製剤発売
1983年1月 厚生省が家庭治療(自己注射)認可
1985年7月 加熱製剤の承認及び販売開始(血友病A)
1985年12月 血友病Bの加熱製剤の承認
1988年10月 モノクローナル抗体処理製剤承認(ヘモフィルM/バクスター社)
1992年4月 国内献血由来の高濃縮製剤が日本赤十字社より発売(クロスエイトM)
1993年 遺伝子組換え型第VIII因子製剤発売
2000年 インヒビター治療遺伝子組換え製剤発売
(ノボセブン/ノボノルディスクファーマ社)
(1) クリオ以前(−1970年まで)
 かつて血液製剤がなかった時代には、輸血によって不足する凝固因子を補給するほかに治療法がなかった。血友病患者の家庭は、普段から出血に備えて輸血をしてくれる親戚や近所の人々を確保しておかなければならなかったのである。輸血療法は血液を確保することが大変で、止血効果としても顕著ではない上、不必要な成分を少なからず体内に投与するため、患者の身体には相当負担があったものと思われる。
 また売血由来の輸血が認められた時代でもあったため、肝炎ウイルス感染や性感染症(STD)などのリスクが非常に高かったと考えられる。やがて1960年代後半にクリオ製剤(クリオプレシピテート)が、最初の血液凝固因子製剤として商品化され、血友病治療は輸血療法に比べれば格段に進歩した。クリオ製剤は、血友病A患者に必要な第VIII因子を含んでいる(製品にもよるが、およそ100ccで100単位)ため、輸血に比べて少量にかつ迅速に処置することができた。これにより血友病患者の社会参加に大いに貢献したといえる。血友病Bについても1972年に第IX因子複合体製剤が登場し、補充療法としての血友病治療が始まった。
△Page TOP
(2) クリオ製剤から非加熱高濃縮製剤(1970−1985年)
 1978年12月に登場した高濃縮製剤は、上記クリオ製剤等に比べて高単位に凝固因子を含み少量の蒸留水に溶解して投与できる(製品にもよるが、およそ20ccあたり100単位)ので、さらに血友病患者の止血管理を容易にした。
  また1983年になり、血液製剤の家庭治療(自己注射)が認められたことにより、血友病患者の社会的行動範囲が一気に広がることになる。しかし、非加熱高濃縮血液凝固因子製剤は、数千人から数万人分の血漿をプールし、これを原料とする。そのためウイルス感染者の血液が、プールした血漿のたとえ一人分であっても、血漿プールに混じった場合、その原料血漿から作られた全ての製剤がウイルスによって汚染されるという危険性があった。
 血友病患者におけるHIV感染被害は、このHIVに汚染された輸入非加熱高濃縮血液凝固因子製剤を使用することによって、また自己注射認可という事象も相まって使用範囲が拡大し、結果的に被害が拡大したといえる。
 当時、肝炎対策として考えられていた加熱処理という工程が、HIVを不活化させることになり、我が国においては1985年以降、血液製剤による新規のHIV感染は激減した。加熱製剤認可後においても非加熱血液製剤の回収が行われず、一部市場に残っていた非加熱血液製剤を使用したために、1985年12月以降も感染した患者が報告されている。
 一方、加熱処理血液製剤は、C型肝炎ウイルス(HCVが特定される1991年までは非A非B型肝炎)対策として加熱処理が行われたわけであるが、結果的にウイルス不活化処理が不十分であった。そのため加熱処理製剤によるHIV感染は免れたもののHCV感染が起きている。HCVを完全に不活化した製剤が現れるのは、1988年のモノクローナル抗体処理製剤の出現を待たなければならなかった。
△Page TOP
(3) 血友病治療製剤の技術革新(1985年以降−)
 高濃縮血液製剤のウイルス汚染が問題となって、以後の血液製剤は、止血効果を維持しつつ、ウイルス不活化と不要なタンパク成分を取り除く「純化の技術」を模索する方向、そして遺伝子工学技術を用いて凝固因子を人工的に作り出す方向へと進んでいった。現在ではヒト由来の血漿からモノクローナル抗体を用いて凝固因子を吸着させる方法、そして有機溶媒・界面活性剤・ナノフィルトレーションを用いた不活化処理・除去技術を組み合わせ、限りなく安全な血液製剤が完成している。
 現在、一部のインヒビター治療用バイパス製剤を除いて、それ以外の血漿由来製剤は日本赤十字社が集めた献血血液を使用している。血液製剤製造前の核酸増幅検査(NAT)の導入、原料血漿がHIV等に汚染されていることが後から判明した場合を想定し、血漿をある一定期間保管するシステム、製造に使用した原料血漿を特定するための遡及調査(ルックバック)システムなど、安全性を高めるための対策が運用されている。
 したがって血漿由来の血友病治療製剤は、現在考えられる科学技術を用いてウイルス不活化を行い、かつセーフティシステムの運用によって、安全性を極めた製剤が作られているといえる。一方遺伝子組換え製剤では、血液由来の原料をいっさい含まない遺伝子組換え製剤も開発されてきている。
 現在、日本においても血友病遺伝子治療の治験がスタートしており、1970年代初めからの約30年間で、血友病治療環境は安全性に関して劇的な技術革新が遂げられてきたといえる。
 一方で未知のウイルスが混入している可能性、新型クロイツフェルトヤコブ病(vCJD)の病原体であるプリオン混入の可能性、遺伝子組換え製剤の危険性等を完全に否定することができない。したがって、これらの危険性に対する答えがでるのは、10年20年もしくは数十年先の次世代になってみないとわからない。
  △Page TOP
 
3.血友病治療の課題と将来
(1) C型肝炎について
 血友病患者にとって、HIV感染症の次に重要な疾患と考えられるのがC型肝炎である。これは血液製剤や輸血により、C型肝炎ウイルス(HCV)に感染したために起こる疾患であるが、HIV感染被害を受けた血友病患者のほぼ全員が抗体陽性という報告がある。
 しかし、近年の血液製剤は、HCVも含めた様々なウイルスの不活化処理が行われているため、肝炎ウイルス感染の危険性は皆無に等しい。また遺伝子組み換え(リコンビナント)製剤しか使っていない患者にとって、人血漿由来のウイルス感染の可能性はないといえる。
 C型肝炎は非常にゆっくり進行する。抗体陽性者でも発病するとは限らないが、慢性肝炎、肝硬変を経て肝臓ガンに至る可能性がある。慢性肝炎が重篤になると血小板が減少し、また凝固因子は肝臓で作られるため、肝臓機能の低下とともに因子活性が低下する。そのため出血傾向が強く起こる。さらに肝硬変になると食道静脈瘤ができ、それが破裂し大出血を引き起こし吐血する場合がある。このため止血が困難な血友病患者の場合は特に気をつけなければならない。抗HIV療法の進歩によりAIDS発症による死亡者が減少する一方で、HIV感染がC型肝炎の進行を早めるという報告があり、肝硬変や肝ガンで死亡する血友病患者が増えている。
 C型肝炎の治療には、これまでインターフェロンが使われてきており、健康保険の範囲内で治療しようとした場合、1人1回6ヶ月間しか使うことができなかった。2002年2月からはインターフェロン治療にかかる制限が取り除かれ、またリバビリンとの併用、コンセンサスインターフェロン、PEGインターフェロンが登場するなど、肝炎治療が日々進歩している。さらに肝硬変に至った患者に対して生体肝移植が3例ほど行われている。血液凝固因子は肝臓組織で作られるため、生体肝移植手術を行ったことで出血回数・程度など血友病の病態が軽快し、いわば治ってしまうという報告がある。
 いずれにせよ、C型肝炎ウイルスに感染した血友病患者は、定期的な肝機能検査やエコー検査などの画像診断は非常に重要であり、今後、自分の肝炎治療を積極的に行うかどうか、どのような治療を選択していくかを患者自身で判断していく必要がある。
△Page TOP
(2) 血友病治療製剤の安全性と安定供給
 
ヨーロッパ各国でvCJD患者の報告数が増加するにつれ、また動物実験の報告からvCJDの血液を媒介とした感染が疑われるようになり、血液由来の凝固因子製剤の安全性に対する意識が高まってきた。これまで遺伝子組換え製剤に安定剤として添加されてきたアルブミンに対しても、安全性を問い直す意識が芽生えてきた。遺伝子組換え製剤のメーカー各社は、現在アルブミンを使用しない製剤を開発し、承認され保険適用になりつつある。
 2001年3月、日本における第VIII因子製剤のシェア40%強を占めていた、バイエル薬品社製遺伝子組換え第VIII因子製剤「コージネイト」が欠品となるトラブルが発生した。この欠品トラブルは全世界規模での欠品であったため、日本以外の国々でも供給不足となった。そのため日本においては、緊急的に日本赤十字社が献血由来の第VIII因子製剤「クロスエイトM」を増産するという対応が取られた。その後2002年夏には、ようやくコージネイトの出荷が再スタートしたが、欠品する前の60%程度の出荷量であった。この欠品事件は、患者・医師・厚生労働省に対して、血友病治療製剤の供給に関して責任の所在を明確にして、治療製剤の需給状況を見ながら、供給不足に陥らないような安定供給を行うシステムをいかに構築するかという必要性を、改めて再認識させた事象といえる。
 これらのことから、先進諸国での血友病治療製剤に関する問題意識は、製剤の安全性、安定的な供給、さらには製剤の低価格化、発展途上国への供給問題へとシフトしている。一方、日本においては、コージネイト欠品事件が後押しとなり、不十分な点を含みながらも2003年7月30日薬事法改正と「安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律(血液新法)」が施行された。
△Page TOP
(3)

血友病治療の将来
 これまでの血友病治療における技術革新は目を見張るものがあるといえるが、遅ればせながら我が国においても血友病の遺伝子治療が厚生科学研究の中で研究が始まっている。海外の血友病遺伝子治療から遅れること約10年、特許・コスト・企業との連携等さまざまな問題を含んでいるが、動物実験において少しずつ成果が出始めてきている。海外における血友病遺伝子治療では、人に応用した研究が実施されて結果が示され始めている。
 
現時点では、この遺伝子治療が血友病の根治療法になるほどの期待はできないが、将来製剤を輸注する必要がなくなる時代がやってくるのかもしれない。

  △Page TOP
 
【参考文献】
1) (財)エイズ予防財団、「血液凝固異常症全国調査」 平成14年度報告書」、2003
2) 日笠 聡、乃村万里、「血友病自己注射マニュアル」、バクスター株式会社、2002
【参考図書】
「血友病の診療」:血友病全般にわたる専門書籍
財団法人血液製剤調査機構/編集代表:藤巻道男・長尾 大 1993年
血友病教育プログラム〜ホームインヒュージョン 教育マニュアル 〜
発行:日本赤十字社 編集:福武勝幸 他共著 1997年改訂第4版
臨床雑誌「内科」〜(特集)出血傾向へのアプロ−チ〜
発行:株南江堂 Vol.72 NO6 1993.12.
血友病医療相談会資料(整形外科的治療編)  作成・発行:ケア−ズ 1994.11.
  △Page TOP
 

Copyright(c) 2003, Japan Commitee For People With Haemophilia All Rights Reserved.